初めての相続

相続は、ほとんどの人が一生に一度か二度しか経験しないもの。
だからこそ「よくわからないまま手続きが進んでしまった」「もっと上手に相続できたかもしれない」そのような声も珍しくありません。

また、インターネットや知人から得た情報が間違っていたり、自分に当てはまらないケースだったりする場合も多く、気づかないうちにトラブルの火種になってしまうこともあります。ここでは、初めて相続に直面した方でも安心して手続きを進められるように、相続の基本をわかりやすく解説します。「何から始めればいいのかわからない」という方は、当事務所までお気軽にご相談ください。

相続が発生すると、遺産の確認や名義変更、税務申告など、多くの手続きが必要になります。実際のところ、思っている以上に時間がかかるケースも少なくありません。そのため、事前に一連の流れを把握し、優先順位をつけて対応していくことがとても重要です。以下は、相続発生後に行う主な手続きを時系列でまとめたものです。スムーズな相続手続きのために、ぜひ参考にしてください。

  • 7日以内
    通夜・葬儀・初七日
  • 被相続人の死亡(相続開始)
  • 死亡届の提出
    葬式費用の領収書の保管
  • 3か月以内
    四十九日の法要
  • 遺言書の有無の確認
  • 遺言(公正証書遺言以外)
    家庭裁判所の検認
  • 相続人の確定
    戸籍・除籍謄本の取り寄せ
  • 遺産・負債の調査
    財産目録の作成
  • 相続放棄・限定承認
  • 4か月以内
  • 準確定申告(被相続人の所得税の申告と納付)
  • 10か月以内
  • 相続財産の確定・評価
  • 特別代理人の選任
    (相続人に未成年者がいるとき)
  • 遺産分割協議
    遺留分侵害請求は1年以内です
  • 遺産分割協議書の作成
    (協議が成立しない場合は調停・審判)
  • 相続税の申告・納付
    延納・物納申請
  • 3年以内
  • 不動産の移転登記、
    財産の名義変更

相続の手続きには、期限があるものや、
慣れない書類もたくさん…
早めの準備が安心につながります。
不安になる前に、まずはご相談ください。

相続に関する手続きの多くには、明確な期限が定められています。

この期限の起点となるのは、法律上「相続が開始したことを知った日」で、一般的には被相続人が亡くなった日とされます。
期限を過ぎてしまうと、取り返しのつかない不利益を受ける可能性もあるため「いつまでに何をすべきか」を正しく理解し、計画的に進めることが非常に重要です。

期限:相続開始を知った日の翌日から3か月以内に家庭裁判所へ申立て

相続人が、被相続人の財産や借金など一切を受け継がないことを選択する制度です。
借金などマイナスの財産が多い場合に有効ですが、期限を過ぎると相続を認めたとみなされるため注意が必要です。

期限:相続開始を知った日の翌日から3か月以内に家庭裁判所へ申立て

プラスの財産の範囲内で、借金などマイナスの財産を受け継ぐ方法です。
借金の額がはっきりしないときなどに選択される場合が多く、相続放棄と同様に期限内の申請が必要です。

期限:相続開始を知った日の翌日から4か月以内に税務署へ申告

被相続人が亡くなった年の所得税を代理で申告する手続きです。
ただし、被相続人に申告の必要がなければ手続きは不要となるため、まずは申告が必要かどうかを確認しましょう。

期限:相続開始を知った日の翌日から10か月以内に税務署へ

相続税の申告と納付は、原則10か月以内が期限です。
期限を過ぎると、軽減制度を利用できなくなったり延滞税がかかったりなどのデメリットがあります。

期限:遺留分の侵害を知った日から1年以内(最長で相続開始から10年)

遺言などによって、自身の取り分(遺留分)を不当に減らされた場合に、その回復を請求できる制度です。ただし、期間を過ぎると請求ができなくなります。

期限:被保険者の死亡日から3年間(かんぽ生命は5年)

被相続人が生命保険に加入していた場合、保険金の受取人は早めの請求が必要です。
加入していた保険会社へ連絡し、手続きを行いましょう。

下記のような相続税の軽減制度が利用できなくなるおそれがあります。

  • 小規模宅地等の特例
  • 農地等の納税猶予の特例
  • 相続税の延納・物納 など
  • 配偶者の税額軽減
  • 非上場株式等の納税猶予の特例

特に「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」は遺産分割協議が完了していないと適用できませんが、申告期限から3年以内に分割された場合等は修正申告または更正の請求で適用可能です。

申告期限までに申告書を提出しないと加算税が、相続税の納付が遅れると延滞税が納期限の翌日からかかります。

延滞期間によって利率が変動するため、無視できない負担になります。

相続手続き中に相続人が亡くなると、未了の相続に加え新たな相続が発生(相次相続)します。

これにより相続関係が複雑化し、遺産分割や税務処理に大きな影響が出ることもあります。