遺言書の効力は絶対?無効になる事例や遺言書がある場合の相続の流れも税理士が解説

遺言書には、亡くなられた方の意思を実現するために強い効力があり、原則として遺言書に従って遺産分割を行います。
とはいえ遺言書の効力は絶対ではないため、無効になるケースもあります。
本記事では、法的な効力が発生する遺言書の内容や無効になる事例を中心に解説します。
遺言書がある場合の相続手続きにも触れているので、遺言書の内容に納得できない方もぜひお役立てください。
![]() | <この記事の監修者> 吉本 貴幸(よしもと たかゆき) 税理士法人吉本事務所 代表社員 税理士・行政書士 大学卒業後、1998年に現在の税理士法人の前身である個人税理士事務所に入所。2021年10月より現職。法人、個人事業のクライアントや相続税、贈与税の申告に関わる一方、税理士法人関連会社の社会保険労務士事務所、行政書士事務所、保険代理店のマネージメントにも携わる。経営に関する総合的な知識のもと、税務申告のみならず、事業運営・起業・法人設立のアドバイスも得意とする。税理士法人関連7サイトの総編集長・監修者として、最新の税務情報発信に務めている。 |
法的に有効な遺言書の種類
遺言書は、遺言者が亡くなられた時点(相続開始時)で効力が発生します。
法的に有効な遺言書は主に、公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言の3種類です。
とはいえ、一般的には公正証書遺言または自筆証書遺言が作成されます。
ここからは、公正証書遺言と自筆証書遺言の2種類を解説します。
公正証書遺言
公正証書遺言とは、法律の専門家である公証人が作成する遺言書のことです。
2人以上の証人が立ち会い、遺言者が遺言書に記載したい内容を公証人に口頭で伝えて作成します。
法的に有効な遺言書を作成できるため、無効になるリスクが低く、作成した遺言書の原本は公証役場で保管され、紛失や偽造の心配がないのも公正証書遺言のメリットです。
また、公正証書遺言は、家庭裁判所での検認手続きが不要です。
検認手続きとは、遺言書の存在や内容を家庭裁判所が確認し、偽造や変造を防ぐために行う手続きのこと。
自筆証書遺言(手書きの遺言書)
自筆証書遺言とは、遺言者本人が手書きで作成する遺言書のことです。
公正証書遺言と比べて、無料で手軽に作成できるメリットがあります。
ただし、民法で定められた要件を満たさなければ無効になるほか、自宅で保管していた場合は相続人に発見してもらえない可能性や、紛失や偽造される可能性がある点には注意しなければなりません。
また、自筆証書遺言は、家庭裁判所での検認手続きが必要です。
なお、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、自筆証書遺言のデメリットを軽減できますが、遺言書の有効性までは保証されません。
法的な効力が発生する遺言書の内容
遺言書は財産に関すること以外にも、法的な効力が発生します。
主な内容は以下の通りです。
財産に関すること
・相続分の指定(指定の委託)
・遺産分割方法の指定(指定の委託)
・法定相続人以外の人への遺贈
・特別受益者の持ち戻し免除
・一定期間の遺産分割の禁止 など
遺言書では、遺言者が所有している財産を「誰に何をどのように相続させるか」を具体的に指定できます。
ただし、一定の相続人に認められている遺留分(最低限の取り分)は侵害できません。
身分に関すること
・婚外子(婚姻関係にない男女の間に生まれた子ども)の認知
・生命保険金の受取人の変更
・相続人の廃除または廃除の取り消し
・未成年後見人や監督人の指定
上記のような相続人の身分に関わる内容も、法的な効力が発生します。
当事者の間で対立が生じやすいため、生前のトラブルを避ける、または自分の意思を明確に残しておく手段として、遺言書が利用されるケースもあります。
遺言の執行に関すること
遺言書では、遺言執行者の指定(指定の委任)も法的な効力が発生します。
遺言執行者とは、遺言書の内容を実現する人のことです。
遺言書を利用して婚外子の認知や、相続人の廃除または取り消しを行う場合は、遺言執行者を選任する必要があります。
遺言書の効力は絶対ではない
遺言書は法定相続分より優先されるため、原則として遺言書に従って遺産分割を行います。
ただし、遺言書の効力は絶対ではなく、以下のような場合は例外です。
・遺言書が無効な場合
・相続人全員が合意した場合
・遺留分を侵害している場合
詳しく解説します。
遺言書が無効な場合
遺言書は民法で定められた要件を満たしていなければ、効力は認められません。
先述の通り、自筆証書遺言書は書き方の不備により、無効になるケースが多々あります。
遺言書が無効と認められた場合、従う必要はなく、遺言書とは異なる遺産分割ができます。
遺言書が無効になる事例は後ほど解説します。
相続人全員が合意した場合
遺言書が法的に有効でも、相続人全員が合意すれば遺言書とは異なる遺産分割ができます。
ただし、一部の相続人だけでは決められないため、全員での話し合いが必要です。
なお、相続税のことを考慮せず遺言書が作成されていた場合、相続税の負担を減らすために遺産分割の方法を変更するケースもあります。
相続税は、財産の分け方で税額が大きく変わる場合があるためです。
遺留分を侵害している場合
遺言書の内容が特定の相続人に大きく偏り、他の相続人の遺留分を侵害している場合があります。
遺留分とは、亡くなられた人の兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者、子ども、父母、祖父母)に保障された最低限の相続分のことです。
遺留分は遺言書よりも優先されるため、遺言書が法的に有効でも、遺留分を侵害された相続人は遺留分侵害額請求ができます。
遺留分侵害額請求が認められると、遺留分を侵害している相続人は不足分を支払う必要があります。
遺言書が無効になる事例
遺言書が無効になる事例を、自筆証書遺言と公正証書遺言に分けて解説します。
自筆証書遺言が無効になるケース
自筆証書遺言が無効になるケースは、主に以下の通りです。
・遺言書の全文・日付・氏名を自筆で作成していない
※本文がパソコンで作成された遺言書は無効
・遺言書の作成日が特定できない
※〇年〇月吉日など
・遺言者の署名・押印がない
・遺言書が誤った方法で修正されている
民法で定められた要件を満たしていなければ無効になるため、自筆証書遺言を発見した場合は有効性を確認しましょう。
公正証書遺言が無効になるケース
公正証書遺言は、自筆証書遺言と比べて無効になるリスクは低いものの、必ずしも有効とは限りません。
公正証書遺言が無効になるケースは、主に以下の通りです。
・遺言者に遺言能力がない
※15歳未満の人、または内容の理解や結果を認識できる能力がない人が作成した遺言書は無効
・遺言書の作成時に証人の資格がない人が立ち会った
※未成年者、推定相続人、遺贈を受ける人、推定相続人や遺贈を受ける人の配偶者・直系血族
実際に裁判で無効が認められた事例もあります。
遺言書がある場合の相続の流れ
遺言書がある場合、相続手続きの進め方は以下のような流れが基本です。
1.相続人・相続財産を調査する
2.遺言書の検認手続きをする
3.遺言書に従って遺産分割をする
4.相続税の申告や相続登記をする
詳しく解説します。
1.相続人・相続財産を調査する
まずは亡くなられた人の出生から死亡までの戸籍謄本を取得し、法定相続人を確定させます。
同時に、預貯金、不動産、有価証券、負債などの財産を調査し、財産目録または一覧表を作成します。
相続人や相続財産の範囲を正確に把握することが、相続手続きを円滑に進める前提です。
なお、遺言書がある場合は相続人全員に存在を知らせる必要があります。
2.遺言書の検認手続きをする
自筆証書遺言がある場合、家庭裁判所で検認手続きを行います。
検認手続きとは、遺言書の存在や内容を家庭裁判所が確認し、偽造や変造を防ぐために行う手続きであり、遺言書が有効か無効かを判断するものではありません。
検認を受けずに遺言書を開封すると、5万円以下の過料を科せられる場合があります。
なお、公正証書遺言または法務局に保管されたていた自筆証書遺言は検認手続きが不要です。
3.遺言書に従って遺産分割をする
遺言書が法的に有効な場合、原則として遺言書に従って遺産分割を行います。
遺言執行者が指定されていれば、遺言執行者を中心に相続手続きを進めます。
なお、遺言書により遺留分が侵害されている場合は、遺留分を侵害している相続人に対して、内容証明郵便による遺留分侵害額請求の意思表示をする必要があります。
4.相続税の申告や相続登記をする
相続税がかかる場合は、被相続人が死亡したことを知った日(被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内に申告・納税を行います。
期限を過ぎると加算税や延滞税がかかるため、できるだけ早いうちに税理士へ相談しましょう。
また、不動産を相続した場合は、所有権の取得を知った日から3年以内に名義変更の手続き(相続登記)をする必要があります。
相続税がかかる方は、司法書士と連携している税理士事務所に相談すると、まとめて依頼できるのでおすすめです。
遺言書を無効にしたい場合の相続の流れ
遺言書を無効にしたい場合、以下のような流れで段階的に手続きを進めます。
1が成立しなければ2へ、2が成立しなければ3へ、のようなイメージです。
1.相続人全員で話し合う
2.家庭裁判所に調停を申し立てる
3.地方裁判所に訴訟を提起する
詳しく解説します。
1.相続人全員で話し合う
相続人全員が合意すれば遺言書とは異なる遺産分割ができるため、まずは相続人全員で、遺言書を無効にするかどうかを話し合います。
全員が合意すれば、紛争を避けて解決することができます。
2.家庭裁判所に調停を申し立てる
話し合いで解決できない場合、家庭裁判所に遺言無効確認調停を申し立てます。
調停では、調停委員の仲介を通して相続人全員で話し合います。
全員が合意して調停が成立すれば遺言は無効となり、相続人全員で遺産分割協議を進めます。
とはいえ、実際は調停の成立が難しく、調停をせずに訴訟を提起するケースが多いでしょう。
3.地方裁判所に訴訟を提起する
調停が成立しない場合、地方裁判所に遺言無効確認訴訟を提起します。
訴訟では、遺言書の無効を主張する相続人が証拠を提出し、主張や立証を行います。
裁判所が無効と判断すれば遺言書は法的な効力を失うため、相続人全員で遺産分割協議を進めます。
【Q&A】遺言書の効力に関するよくある質問
最後に、遺言書の効力に関するよくある質問にお答えします。
遺言書が有効か無効かは誰が判断する?
遺言書が有効か無効かは、最終的に裁判所が判断します。
なお、相続人全員で遺言書を無効にすることを決めた場合、調停や訴訟を行う必要はありません。
法的な効力が認められる遺言書の要件は?
自筆証書遺言の場合、以下のような要件を満たす必要があります。
・遺言書の全文・日付・氏名が自筆で作成されている
・遺言書の作成日が明確に記載されている
・遺言者の署名・押印がされている
・遺言書が正しい方法で修正されている
※遺言書の内容を変更する場合は二重線を引き、訂正のための押印と、変更した場所や内容の記載や署名も必要。
また、遺言書の種類を問わず、作成時に遺言能力があることも要件の一つです。
遺言書の効力に有効期限はある?
遺言書に有効期限はありません。
自筆証書遺言も公正証書遺言も同様です。
なお、複数の遺言書が作成されていた場合は、最後の遺言書が優先されます。
遺産分割や相続税のご相談は税理士法人吉本事務所へ

・遺言書を発見したが、どのように手続きを進めればいいか
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まとめ
遺言書には強い効力があり、原則として法定相続分より優先されるものの、民法で定められた要件を満たしていなければ無効になります。
また、相続人全員の合意や遺留分の問題がある場合、遺言書を無効にすることもできます。
不安や疑問は早めに専門家へ相談し、不要なトラブルは避けて相続手続きを進めましょう。
