小規模宅地等の特例の要件を税理士がわかりやすく解説!同居していない親族が特例を利用するには

小規模宅地等の特例は、亡くなられた方の自宅の土地などを相続したときに、土地の評価額を大幅に減額できる制度です。
利用できる可能性がある人は、以下の通りです。
1.配偶者
2.同居している親族
3.別居している親族
相続税の負担を抑えられる代表的な特例ですが、同居・別居の状況によって細かな要件があります。
本記事では、小規模宅地等の特例の要件や利用できないケースも、税理士がわかりやすく解説します。
![]() | <この記事の監修者> 吉本 貴幸(よしもと たかゆき) 税理士法人吉本事務所 代表社員 税理士・行政書士 大学卒業後、1998年に現在の税理士法人の前身である個人税理士事務所に入所。2021年10月より現職。法人、個人事業のクライアントや相続税、贈与税の申告に関わる一方、税理士法人関連会社の社会保険労務士事務所、行政書士事務所、保険代理店のマネージメントにも携わる。経営に関する総合的な知識のもと、税務申告のみならず、事業運営・起業・法人設立のアドバイスも得意とする。税理士法人関連7サイトの総編集長・監修者として、最新の税務情報発信に務めている。 |
小規模宅地等の特例とはどんな特例?
小規模宅地等の特例とは、亡くなられた方の家族が住み続けたり事業を続けたりするための土地であれば、相続税を安くしますよという制度のことです。
具体的には以下のような土地を相続したときに、要件を満たせば土地の評価額を減額できます。
1.特定事業用宅地等(事業に使っていた土地)
2.特定居住用宅地等(自宅の土地)
3.貸付事業用宅地等(賃貸に使っていた土地)
※本記事では「2.特定居住用宅地等」に限定して解説します。
減額される割合や適用できる面積は、土地の種類によって変わります。
たとえば、亡くなられた方の自宅の土地は、330㎡までは評価額を80%減額できます。
なお、土地の面積が330㎡を超える部分は減額されません。
小規模宅地等の特例の対象となる土地
特定居住用宅地等として小規模宅地等の特例の対象になる土地は、主に以下の通りです。
・亡くなられた方の自宅の土地
・亡くなられた方と生計を一にしていた親族の自宅の土地
亡くなられた方(または亡くなられた方と生計を一にしていた親族)が住んでいた土地以外は、小規模宅地等の特例の対象にはなりません。
たとえば、別荘の土地や子どもに貸している土地などは対象外です。
「生計を一にする」とは、同じ家計で生活している状態のことです。
勤務、修学、療養などの都合により同居していなくても、生活費、学資金、療養費などの仕送りが常に行われている場合を指します。
小規模宅地等の特例を利用するための要件
前提として、小規模宅地等の特例を利用できる人は、亡くなられた方の配偶者、または一定の要件を満たす親族に限られます。
ここからは、相続人ごとに小規模宅地等の特例の要件をわかりやすく解説します。
1.配偶者が相続する場合
2.同居している親族が相続する場合
3.別居している親族が相続する場合
1.配偶者が相続する場合の要件
亡くなられた方の配偶者に、要件はありません。
もし別居していたとしても、無条件で小規模宅地等の特例を利用できます。
なお、内縁の妻・夫は法律上の配偶者ではないため、小規模宅地等の特例は利用できません。
2.同居している親族が相続する場合の要件
亡くなられた方と同居していた親族は、以下の要件を満たす必要があります。
・相続が発生する前から相続税の申告期限まで住み続けること
・相続が発生したときから相続税の申告期限まで所有し続けること
亡くなられた方と住民票が同じでも、同居の実態がなければ小規模宅地等の特例は利用できません。
なお、以下のような場合は同居と認められます。
・単身赴任で一時的に別居していた
・区分登記されていない二世帯住宅に住んでいた
・亡くなられた方が老人ホームに入居していた※別途要件あり など
亡くなられた方が老人ホームに入居していた場合、以下の要件も満たす必要があります。
・亡くなられる直前に要介護、要支援、または障害支援区分の認定などを受けていたこと
・入居施設が老人福祉法等に規定する老人ホームであること
・老人ホームの入居後に自宅を貸し出していないこと(子どもに無償で貸し出す場合も含む)
3.別居している親族が相続する場合の要件(家なき子特例)
亡くなられた方と同居していなくても、以下の要件を満たす親族は、小規模宅地等の特例を利用できます。
・亡くなられた方に配偶者や同居の相続人がいないこと
・相続が発生する前の3年以内に自分の持ち家に住んでいないこと
※自分の配偶者、三親等内の親族、特別の関係がある一定の法人の持ち家も含む
・相続が発生したときに自分が住んでいた家を過去に所有していたことがないこと
・相続した土地を相続が発生したときから相続税の申告期限まで所有し続けること
基本的には、亡くなられた方が1人暮らしをしており、相続人が賃貸物件に3年以上住んでいるようなケースでは利用できる可能性が高いでしょう。
これを「家なき子特例」と呼びますが、呼び方が異なるだけで制度自体は小規模宅地等の特例のことです。
なお、平成30年の税制改正により、以前より家なき子特例の対象範囲は狭くなりましたが、要件を満たす可能性がある場合は税理士に相談してみましょう。
【小規模宅地等の特例用】判定フローチャート
小規模宅地等の特例の対象かを確認するためのフローチャートをご用意しました。
なお、実際に特例を利用できるかどうかは個々の状況によって異なるため、詳細は税理士へご相談ください。
※こちらは亡くなられた方の配偶者または同居親族用です。
別居親族は以降の【家なき子特例用】をご参照ください。
1.亡くなられた方の自宅の土地ですか?
→はいの方は2へ
→いいえの方は対象外
2.亡くなられた方に、配偶者または同居の親族はいますか?
→はいの方は3へ
→いいえの方は対象外
3.その土地は配偶者が相続しますか?
→はいの方は対象
→いいえの方は4へ
4.その土地は同居の親族が相続しますか?
→はいの方は5へ
→いいえの方は対象外
5.同居の親族は相続税の申告期限までその土地に住み続けますか?
→はいの方は6へ
→いいえの方は対象外
6.同居の親族は相続税の申告期限までその土地を所有し続けますか?
→はいの方は対象
→いいえの方は対象外
【家なき子特例用】判定フローチャート
1.あなたは日本国籍を有していますか?
→はいの方は2へ
→いいえの方は対象外
2.亡くなられた方に配偶者はいませんか?
→はいの方は3へ
→いいえの方は対象外
3.亡くなられた方に同居の親族はいませんか?
→はいの方は3へ
→いいえの方は対象外
4.相続が発生する前の3年以内に自分の持ち家に住んだことはないですか?
→はいの方は5へ
→いいえの方は対象外
5.相続が発生する前の3年以内に自分の配偶者の持ち家に住んだことはないですか?
→はいの方は6へ
→いいえの方は対象外
6.相続が発生する前の3年以内に自分の三親等内の親族(父母、子供、兄弟姉妹、祖父母など)の持ち家に住んだことはないですか?
→はいの方は7へ
→いいえの方は対象外
7.相続が発生する前の3年以内に自分と特別な関係がある法人(同族会社など)の持ち家に住んだことはないですか?
→はいの方は8へ
→いいえの方は対象外
8.相続が発生したときに住んでいた家を過去に所有していたことはないですか?
→はいの方は8へ
→いいえの方は対象外
9.その土地を相続税の申告期限まで所有し続けますか?
→はいの方は対象
→いいえの方は対象外
要件の詳細は、国税庁のホームページでも確認できます。
国税庁:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
小規模宅地等の特例を実際に適用できた事例
よくあるケースとしては、配偶者の居住用に小規模宅地等の特例を適用する事例です。
また、居住用ではありませんが、マンション・アパートなどの貸付事業用もほとんどの場合に適用できます。
ただし、近時の改正によりマンションなどの貸付事業用は、その事業を開始してから3年以上が経過していないと適用できなくなった点には注意が必要です。
小規模宅地等の特例を適用できなかった事例
一般的に気を付けなければならない事例として、相続税の申告期限より早く申告が完了し、申告期限前に土地を売却してしまい、小規模宅地等の特例の適用が取り消されるケースがあります。
先述の通り小規模宅地等の特例を適用する土地は、相続税の申告期限まで所有し続けること、相続が発生する前から相続税の申告期限まで住み続けることが要件に含まれます。
申告書提出後に、税務署員が土地を見に行って発覚することもあるようです。
申告が完了しているかどうかにかかわらず、申告期限までは売却しないよう注意しましょう。
小規模宅地等の特例を利用する方法
小規模宅地等の特例を利用するには、相続税の申告が必要となります。
相続税の申告期限は、被相続人(亡くなられた方)が死亡した日の翌日から10か月以内です。
相続税がかかると思われる方は、できるだけ早いうちに税理士へ相談し、申告の準備を進めることをおすすめします。
添付書類(特例を利用するために必要な書類)
小規模宅地等の特例を利用するために必要な書類は、主に以下の通りです。
▼共通
・被相続人の戸籍謄本または法定相続情報一覧図
・遺言書または遺産分割協議書
・相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印したもの)
▼別居親族が相続する場合(家なき子特例)
・相続人の戸籍の附表
・賃貸契約書 など
▼被相続人が老人ホームに入居していた場合
・被相続人の戸籍の附票
・介護保険の被保険者証または要介護認定証
・老人ホームへの入居時の契約書 など
ケースによって異なるため、詳しく知りたい方は国税庁の資料も確認してみてください。
国税庁:(参考)相続税の申告の際に提出していただく主な書類
小規模宅地等の特例が利用できないケース
小規模宅地等の特例は、本来であれば利用できるはずが、以下のような場合には利用できなくなるケースがあります。
相続税の申告をしていないケース
小規模宅地等の特例を利用するには相続税の申告が必要となるため、当然ながら申告をしていないケースは利用できません。
通常、相続税がかからないときは申告も不要ですが、小規模宅地等の特例を利用することで相続税が0円になるとしても申告は必要です。
「納税額が0円=申告不要」と誤解しやすいため、注意しましょう。
また、原則として申告期限までに遺産分割が完了している必要があります。
相続税の申告期限前に土地を売却したケース
相続税の申告期限前に相続した土地を売却してしまうと、小規模宅地等の特例は利用できません。
配偶者以外の親族が相続する場合は、相続税の申告期限までその土地を所有し続けることも要件のためです。
特に、相続財産の中で不動産の割合が多い場合、納税資金不足に陥るケースもあります。
生命保険金の活用や預貯金の確保など、生前から納税資金の対策を検討しておくことも重要です。
相続時精算課税により土地を取得したケース
相続時精算課税制度とは、18歳以上の子または孫が60歳以上の父母または祖父母から財産の贈与を受けた場合に、年110万円+2,500万円までは贈与税が非課税となる制度のことです。
この制度を使って生前贈与を受けた土地は、小規模宅地等の特例が利用できません。
相続時精算課税制度を利用して贈与税を抑えられる場合でも、将来的に小規模宅地等の特例が使えなくなることで、結果として相続税の負担が増えるケースもあります。
相続が開始しておらず、将来的に土地を相続する予定がある場合は、どのような選択が最善か、贈与税と相続税の双方を踏まえながら、税理士に相談し検討しましょう。
【FAQ】小規模宅地等の特例に関するよくある質問
ここからは、小規模宅地等の特例に関するよくある質問にお答えします。
小規模宅地等の特例は同居していない場合も利用できる?
小規模宅地等の特例は、亡くなられた方と同居していなくても利用できる可能性があります。
要件は、以下の通りです。
▼別居している親族が相続する場合の要件(家なき子特例)
・亡くなられた人に配偶者や同居の相続人がいないこと
・相続が発生する前の3年以内に自分の持ち家に住んでいないこと
※自分の配偶者、三親等内の親族、特別の関係がある一定の法人の持ち家も含む
・相続が発生したときに住んでいた家を過去に所有していたことがないこと
・相続した土地を相続が発生したときから相続税の申告期限まで所有していること
基本的に、自分や親族などの持ち家に住んでいる状態では利用できませんが、賃貸住宅に住んでいる場合は対象になり得ます。
小規模宅地等の特例で同居していないことはバレる?
結論から言うと、必ずバレます。
小規模宅地等の特例の要件を満たす人がいない場合、本当は同居していないけど「同居していたことにできないか?」と考えるかもしれません。
税務署は住民票だけでなく、実際の生活実態を徹底的に調べるため、調査官を騙すことはできません。
小規模宅地等の特例はいつからの同居が認められる?
小規模宅地等の特例には、いつからという同居の期間に関する要件はありません。
よって相続が開始される1週間前からの同居でも、事実であれば認められます。
ただし、相続税の申告期限までは住み続けるかつ所有し続ける必要があります。
生前に老人ホームへ入居していた場合も利用できる?
亡くなられた方が老人ホームに入居していた場合でも、入居前に住んでいた自宅の土地であれば、小規模宅地等の特例の対象です。
ただし、以下の要件を満たす必要があります。
・亡くなられる直前に要介護、要支援、または障害支援区分の認定などを受けていたこと
・入居施設が老人福祉法等に規定する老人ホームであること
・老人ホームの入居後に自宅を貸し出していないこと(子どもに無償で貸し出す場合も含む)
小規模宅地等の特例はマンションにも利用できる?
小規模宅地等の特例は、マンションにも利用できます。
ただし、分譲マンションの場合は敷地権の共有持分が対象となり、戸建てと比べて特例の節税効果は小さくなる場合があります。
なお、亡くなられた方の自宅であれば、分譲マンションも同じく330㎡までは評価額を80%減額できます。
マンションの評価方法は専門知識が求められるため、必ず税理士へ相談しましょう。
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まとめ
小規模宅地等の特例は、相続税がかかる場合にぜひ確認しておきたい特例の一つですが、実際に利用するためには一定の要件があります。
特に別居親族が利用する場合は、持ち家の有無や居住実態など細かな確認が必要です。
誤った判断をすると特例を利用できなくなくなる可能性もあるため、すでに相続が発生している場合はもちろん、将来的に土地を相続する予定がある場合も、早いうちに税理士へ相談し、適切に準備を進めましょう。
